2025年11月29日、私は原宿と青山で、人気ストリートブランドの限定アイテムを求めて初めて「並び」に参加いたしました。
今回狙ったのは、原宿のセレクトショップ「GR8」の『Geeks Rule x PANTY & STOCKING Tシャツ』と、青山「UNDERCOVER」の『HUMAN MADE x UNDERCOVER 6Panel Twill Cap』の二点です。
この記事の目的は、私自身の初体験を記録する備忘録であると同時に、「並び」の経験がない方々に向けて、その現場の空気感、抽選から購入までの具体的な手順、そして必要なマナーや準備を詳細にお伝えすることにあります。(特に誰からも求められていないかもしれませんが、、、)
特に、近年厳格化されている販売ルール、そして現場で垣間見えた購入者の変化や社会情勢の影響についても、深く掘り下げて考察いたします。このレポートが、皆様が次に「並び」に挑戦される際の一助となれば幸いです。
第一章:GR8での体験記 〜整理券配布と抽選アプリの流れ〜
1. 現場への動機とアイテムの魅力
まず足を運んだのは、原宿にあるGR8です。今回は、UNDERCOVERの抽選に当選し、原宿に行くことが決まっており、かつタイミングが合うため参加を決めました。GR8で先行販売されたのは、アニメ「New PANTY & STOCKING with GARTERBELT」とGeeks RuleのコラボTシャツです。Geeks Ruleはアニメや映画などの写真・イラストを、シルク印刷したTシャツを多数対応されており、その仕上がりは折り紙つきです。その丁寧な仕事ぶりなTシャツと、印刷対象のメディアの熱狂的なファンを持つアイテムは、販売方法にも独自のルールが設けられることが多いです。
2. 【並びの作法1:情報収集と時間厳守】〜告知を見落とさない〜
「並び」に参加する上で最も重要なのが、事前の情報収集です。
GR8は11時開店でしたが、公式Instagramで以下のような販売ルールが告知されていました。
「10:20 – 10:30 の間に源氏山テラスに集合、整理券を配布する」
この集合時間と場所の指定を厳守することが、参加の絶対条件となります。10:30を過ぎてしまうと、列に加わることはできません。
私は指定時間の10:20に、集合場所である「源氏山テラス」に到着しました。すでに店員の方が待機されており、指示に従って階段に沿って2列の列が形成されていました。列は、洋服好き、アニメ好きの方々が非常に整然としており、横入りをしたり、周りを威圧するような雰囲気は一切ありません。
これは、集まって来たお客さまそれぞれが自分の「好き」を買いに来た同志であり、尊重すべきだと認識していたから、と言うのも大きいと思うのですが、GR8の店員さんたちの指示や対応は簡潔で、その根底には我々の「好き」を購入するためにご支援いただいている、そんな協力関係があって、本当に美しかったです。
3. 入場抽選の手順:iPadが決定する運命
10:30になり、列の整理が完了しました(この時点で約30名)。店員さんは列の先頭から順にiPadを取り出し、入場順番を決める抽選を開始しました。
この抽選アプリの操作自体は店員さんが行います。重要なのは「身分証の提示」です。このとき身分証の提示を求められたか記憶が曖昧なのですが、多くのブランドでは本人確認のため身分証が必須となります。念のため、顔写真付き身分証を必ず準備しておくのが安全策です。
順番が決まると、店員さんから「10:50に再び源氏山テラスに戻るように」との指示があり、参加者は一旦解散となりました。
4. 入店から会計まで:スムーズな流れ
10:50に再集合し、抽選で決まった順番通りに再び2列で並びます。
11:00、開店。
店員さんの誘導で、10名ずつ店内に案内されます。店内に入ると、客はレジに向かって1列に整列。
- 購入の流れ:
- 自分の順番が来る。
- レジで欲しいサイズを店員さんに伝える。
- 商品の確認後、会計を済ませる。
試着などはなく、非常に効率的でスムーズな流れでした。これは、多くのお客様に対応し、店内での混乱を防ぐための配慮でしょう。
5. 現場の雰囲気:転売ヤーの不在と健全なファン層
今回のGR8の並びで特に印象的だったのは、参加者の層の健全さです。
並んでいた方々は、明らかにGeeks Ruleやそのカルチャーを愛好している純粋なファン層に見えました。転売を目的としているような方は見当たらず、アイテムを手に入れることへの期待感に満ちた、穏やかな雰囲気でした。
実際、このアイテムは翌日になってもフリマサイトにほとんど出品されていませんでした。**厳格な販売ルールと、アイテムの性質(ニッチなファン層)**が、本当に欲しい人に商品を届けるという健全なメカニズムを機能させていたのだと感じました。
第二章:UNDERCOVERでの体験記 〜事前抽選の突破と「空席」の謎〜
1. 難関の事前抽選:アプリが握る購入権
次に、青山のUNDERCOVERへ向かいました。こちらは、NIGO氏のHUMAN MADEとの注目コラボレーションアイテムです。
このアイテムは、当日並ぶ前に、事前の抽選に当選している必要がありました。
- 事前準備: 11/26〜11/27の期間に、アプリから店頭入場の抽選を申し込み。
UNDERCOVER青山の抽選に当選するのは非常に難しく、今回当選できたのは、非常に運が良かったと言えます。なお、抽選の告知はWebから情報を得ました。
ここでの教訓は、「並び」は現場の体力勝負ではなく、事前の「情報戦」と「アプリ抽選」で権利を獲得することが最重要ということです。
2. 厳格な入場システム:身分証が必須の防波堤
指定された時間になり、店舗へ。UNDERCOVERの販売ルールは、GR8以上に厳格でした。
- 呼び出しと確認:
- 毎時00分に、アプリに通知された整理番号で呼び出し。
- 店員さんに、アプリの当選画面と顔写真付きの身分証を提示。
身分証の提示は、転売を目的とした代行業者や不正な購入を排除するための強力な手段です。これがなければ、店内に一歩も入れません。
店員の方は、ルールに従う購入者に対しては非常に親切で丁寧に対応してくださり、安心して買い物をすることができました。
3. 現場の状況:「空席」が半数? 不在の背景を考察
おそらく、1時間あたり30人程度の入場制限が設けられていたのでしょう。
無事に入場し、お目当てのキャップを購入できました。しかし、店内には驚きの状況がありました。何よりも不可解だったのは、「整理番号で呼ばれても、来ていない人が半数くらいいた」という事実です。
なぜ、難関の抽選を突破したにも関わらず、これほど多くの当選者が放棄したのでしょうか? 私たちは、その背景にある二つの要因を考察しました。
考察(1):国際情勢(渡航制限)の影響
海外、特に中国などのアジア圏では、UNDERCOVERやHUMAN MADEのコラボレーションは非常に高い人気を誇ります。通常であれば、当選者の多くを海外のバイヤーや渡航者が占めることも少なくありません。
現在、日中関係やその他の理由による渡航制限の影響で、当選した海外在住者が来日できず、結果として「空席」が大量に発生した可能性があります。これが、国内のファンである私にまでチャンスが回ってきた、外部要因による現象だと推測されます。
考察(2):転売組織の動員と厳格ルールの効果
一方で、転売を目的とした動員も見られました。
同日、渋谷では、ストリートファッションとは無縁に見えるお年寄りが整理券に群がっている写真がSNSで投稿されていました。これは、コラボの高額転売価値を狙った代行業者による組織的な買い付けの一端であると考えられます。
しかし、今回のUNDERCOVER青山店では、厳格な「アプリ当選画面+身分証提示」というルールが敷かれていました。このルールが、転売組織が動員した代行人(身分証が用意できない、あるいは当選アプリを持っていない)を効果的に排除した結果、「半数不在」という、ファンにとっては幸運な状況を生み出したのではないでしょうか。
結論: 厳格な販売ルールと渡航制限という国際的な要因が複雑に絡み合い、結果として転売勢力が排除され、ファンに購入の機会が残された、興味深い事例でした。
最終章:戦利品の検証と初めての「並び」から得た教訓
1. 並び後の街の熱気
青山でのミッションを終え、街を歩くと、その日の東京のファッションへの熱気を肌で感じました。
GR8を出た後、GORO’s(ゴローズ)やキディランド、主要なストリートショップなど、あちこちで長蛇の列ができていました。これは、ストリートカルチャーが今なお多くの人々を惹きつけている証拠であり、「限定品」という体験を求めて人々が動員されている事実を物語っています。
2. 戦利品の満足度
苦労の末に手に入れたアイテムは、期待以上の満足感を与えてくれました。
- UNDERCOVERキャップ:HUMAN MADEのクマのデザインとUCのロゴが融合しており、非常に可愛らしいです。品質の高さも素晴らしく、並んだ甲斐がありました。
- Geeks Rule Tシャツ:こちらも、安心感のある品質と丁寧なシルクスクリーン印刷が施されており、観賞用にするか日常使いにするか、贅沢な悩みを抱えています。
3. 初めての「並び」から得たマニュアル
今回の経験から、これから「並び」に参加される方へ、私からお伝えしたいマニュアル(教訓)をまとめました。
| No. | 教訓(並びの作法) | 準備・心構え |
| 1. | 情報収集を徹底 | 公式SNS(特にInstagram)の告知は、集合時間・場所・ルール変更がないか、隅々まで確認する。 |
| 2. | 身分証は最重要 | 顔写真付き身分証(運転免許証、マイナンバーカードなど)は必須です。不正防止のため、いつでも提示できるように準備しておく。 |
| 3. | 事前抽選の応募 | 現場の列に並ぶ前に、アプリやウェブでの抽選応募が必須のケースが増えています。諦めずに必ず申し込みましょう。 |
| 4. | 店員さんの指示に従う | 現場の店員さんの指示は絶対です。ルールを守る人には親切に対応してくれます。安全かつスムーズに購入するために協力しましょう。 |
| 5. | 徹夜や私的な場所での待機は厳禁 | 近隣住民や店舗への迷惑になるため、公式に認められていない場所や時間での待機は絶対にやめましょう。 |
結び:変わる「並び」の未来
初めての「並び」は、緊張感もありましたが、無事に目的を達成でき、大きな学びを得ることができました。
今回の経験を通じて、厳格な販売ルールが、転売目的の勢力を排除し、本当にそのアイテムを愛するファンに商品が届くように、確実に機能し始めていることを実感いたしました。そして、販売の現場が、国際的な情勢とも密接に結びついているという複雑な現実も垣間見ました。
この記事が、ファッションやカルチャーを愛する皆様が、安心して「並び」に参加するための確かな道しるべとなることを願っております。

コメント