日本のヒップホップシーンを牽引し、BMSGのCEOとしても多忙を極めるSKY-HI。彼が放った最新作『Success Is The Best Revenge』は、まさに彼にしか到達できない、技術と感情が高度に結晶化したアルバムだ。
今回の新譜を聴いて、まず耳を奪われるのは「言葉の解像度の高さ」である。
1. 「伝わる」言葉と、エミネム級の「速射砲」
驚くべきは、その卓越した滑舌とライミングの妙だ。日本語の音を一切蔑ろにすることなく、流れるように耳に飛び込んでくる。それでありながら、いろいろな場面で見せる高速ラップは、エミネム(Eminem)を彷彿とさせる凄みを帯びている。
一般的に、ラップを高速化すればするほど語彙の明瞭さは失われがちだが、SKY-HIは違う。一音一音が結晶のように鋭く、聴き手に向かって真っ直ぐに突き刺さる。この「分かりやすさ」と「テクニカルな難易度」の両立こそが、彼が「ポップスター」であり「生粋のラッパー」である所以だろう。
2. 楽器としての「声」が描く、多層的な感情表現
さらに特筆すべきは、彼の声による表現力の幅広さだ。 低く這うような威圧感から、突き抜けるような高音、そして内面を吐露するような繊細なニュアンスまで。一つの楽曲の中で、彼の声は千変万化に形を変える。この多層的なボーカルアプローチによって、楽曲に込められた「怒り」「決意」「そしてその先にある達成感」といった複雑な感情が、生々しく心に響いてくる。
3. トレンドの先を見据えた「サウンド」への期待
トラックは、近年のトレンドを汲んだエレクトロニックな質感をベースに、中毒性の高い仕上がりとなっている。しかし、この剥き出しのラップを聴いていると、ふと欲が出てしまう。
それは、「人間味のある、生演奏のトラック」でこの熱量を浴びてみたい、ということだ。 SKY-HIはこれまでも「THE SUPER FLYERS」とともに、バンドサウンドでの圧倒的なグルーヴを体現してきた。今回の新譜で見せた、エッジの効いた攻撃的なラップが、太いドラムのキックやうねるベース、ダイナミックなホーンセクションと激突したとき、一体どんな化学反応が起きるのか。
デジタルの冷徹なビートの上で踊る今の形も最高にクールだが、彼の「体温」をよりダイレクトに感じるライブアレンジにも、大きな可能性を感じずにはいられない。
まとめ
『Success Is The Best Revenge』は、単なる成功者の誇示ではない。 それは、言葉を研ぎ澄まし、声を鍛え上げ、結果を出し続ける者だけが到達できる、究極の証明だ。今のSKY-HIの勢いを、ぜひその耳で、その肌で感じてほしい。

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