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レビュー:TENBLANK『Glass Heart』──虚構を突き破り、実存へと至る音楽

TENBLANK 音楽
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1. 背景とコンセプト

Netflixドラマ『Glass Heart』から生まれた架空のバンド、TENBLANK。俳優たちが役を演じるにとどまらず、実際に演奏し歌い上げたその成果が、デビューアルバム『Glass Heart』として現実世界に結実した。

「劇中歌」という枠を超え、アルバムとして聴き応えを持つ水準に仕上げられている点が最大の驚きだ。ドラマに没入した視聴者はもちろん、純粋に音楽ファンとして接した場合でも、本物のバンドのデビュー作として十分に評価できる完成度を誇っている。

2. 楽曲提供者と音楽性

このアルバムの強度を支えているのが、現代日本の音楽シーンを代表するクリエイター陣だ。野田洋次郎(RADWIMPS)、飛内将大、Yaffle、清竜人らが楽曲を提供し、それぞれの作風がTENBLANKというフィルターを通すことで、唯一無二のカラーに変換されている。

サウンドの幅は広く、疾走感あふれるロックから叙情的なバラード、洗練されたポップスまでが揃う。それでいてアルバム全体としては「揺らぎやすく、しかし強靭な心」というテーマが通底し、統一感を損なわない構成になっているのが見事だ。

さらに仕上げを担ったのは、世界的マスタリング・エンジニア、Vlado Meller。各楽器のアタックの鮮烈さ、ヴォーカルの存在感は圧倒的で、ドラマの熱量をそのまま音に封じ込めたような迫力を獲得している。

3. ドラマとの連動性

ドラマ『Glass Heart』は全10話構成で、最終話はほぼ丸ごとライブに充てられている。1話から9話までは、このクライマックスに至るまでのメンバーの心情の揺れや葛藤が描かれ、その積み重ねが最終話のステージへと結実する。

この設計によって、アルバムに収録された楽曲は単なる劇伴ではなく、登場人物たちの“物語”を背負った歌として響く。リスナーは曲を聴くたびにドラマの場面を想起し、物語と音楽の双方が相乗効果を生む。粗さが指摘される設定部分もあるが、「ライブへと至る心の物語」という大枠の構成は緻密で、アルバムがその感情の爆発を受け止めることで、TENBLANKというバンドは“実在”へと飛躍している。

4. 収録曲レビュー

「旋律と結晶」

• 作詞:野田洋次郎/作曲:飛内将大

雨の中、藤谷直季と西条朱音が傘を分け合う名場面を彩る楽曲。野田洋次郎の繊細で詩的な言葉が、ふたりの間に生まれる微妙な感情の揺れを描き出し、飛内将大の透明感あふれる旋律がその情景を音として結晶化する。儚さと強さが同居する本作を象徴する一曲。

「永遠前夜」

• 楽曲提供:野田洋次郎

藤谷直季が西条朱音に抱く想いを静かに、しかし強烈に綴ったラブソング。野田本人が「黙って自分のものにしてしまいたい」と語るほどの完成度で、歌詞とメロディの融合は胸を打つ。最終話のライブでは披露されないが、それがかえって曲の特別性を際立たせており、アルバムで聴くことで直季の心の奥底を覗き込むような感覚をもたらす。

(※他の収録曲もそれぞれに見どころがあるが、ここでは象徴的な2曲を取り上げた。)

5. 総評

TENBLANK『Glass Heart』は、ドラマの枠を超え、音楽作品として高い完成度を誇るアルバムだ。

• 野田洋次郎、飛内将大、Yaffle、清竜人らによる強力な楽曲提供

• Vlado Mellerによる国際水準のマスタリング

• 全10話のドラマ構成と緊密に呼応する楽曲配置

これらが組み合わさることで、TENBLANKは「ドラマに登場するバンド」ではなく「音楽を鳴らすリアルな存在」として確かに立ち上がった。

フィクションから現実へ。『Glass Heart』はその境界を突き破った音楽的証明である。

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